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島原のモヤイ

島原についてのあれこれを紹介

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島原の方言(その5) ばあやん~わい

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ばあやん  「ばあさん」

はさみたろー  「クワガタ虫」のこと。これは島原半島の北部で使われていたらしいのですが(山本靖民著『島原半島方言集』より)、あまり一般的ではなくわたしも初めて知りました。でも、面白い言葉なので集録しておきます。現在も使われているかどうかは分かりません。


ばちかぶる  「罰が当たる」

はってく  「行ってしまう」

ばってん  「でも」「だが」「しかし」 長崎弁として全国的にチョー有名な言葉ですが、長崎だけではなく福岡・佐賀・長崎のかなり広範囲の地域で使われています。
例文
山田洋二の寅さん映画は面白かけんよう見るとばってん、28作目ん「寅次郎紙風船」にゃがっぱいしたばい。あん映画ん中で、小沢昭一んなんもんよ九州弁らしかとばしゃべりよったとばってん、そいが九州弁にはなっちょらんとやもん。小沢昭一は名優じゃろばってん、あん役はミスキャストやった。舞台は福岡んごたったけど、福岡出身の俳優もおったろもん。米倉斉加年とか。なして福岡出身の俳優ば使わんやったとやろか。東京ん人間はだまされてん、九州ん人間の聞けば、こら博多弁じゃなか、九州んどこん言葉でもなかて、すぐ分かっと。ほんて、あいにはがっぱいしたばい。
和訳
山田洋二の寅さん映画は面白いからよく見るんだけど、28作目の「寅次郎紙風船」にはがっかりしたよ。あの映画の中で、小沢昭一がなにか九州弁らしきものをしゃべっていたんだけど、それが九州弁にはなってないんだもん。小沢昭一は名優だろうけど、あの役はミスキャストだった。舞台は福岡みたいだったけど、福岡出身の俳優もいただろうに。米倉斉加年とか。なぜ、福岡出身の俳優を使わなかったんだろうか。東京の人間はだまされても、九州の人間が聞けば、これは博多弁じゃない、九州のどこの言葉でもないと、すぐ分かるんだよ。ほんと、あれにはがっかりしたんだ。


はばしか  「激しい」

はぶてる  「すねる」「ふてくされる」「ぷりぷり怒る」という感じです。

例文
「あら、あけみちゃんはきちょらんとね?」
「さっきまで、まっちょらしたとばってん、あんたがあんまり遅かもんけん、はぶててはってかした」
和訳
「あら、あけみちゃんは来てないの?」
「さっきまで、待ってたんだけど、あんたがあんまり遅いもんだから、ふてくされて行ってしまったよ」

ひえじご  「憶病者」「こわがり」

ひこくれちょる  「でこぼこしている」

ひっちゃかまし  「やかましいの強調」

ひっちゃがいか  「はがゆい、腹立たしいの強調」

ひっちょちょわし  「よそわし(汚い)の強調形」

ひっかんげる  「こわれる」

びっしゃげる  「つぶれる」

びっしゃぐ   「つぶす」
例文 
「あいたしこ!」
「なんしたんな?」
「足の上に豆腐ばおっちゃかしたら、親指んびっしゃげた」
「ほおお」
和訳
「あいたた!」
「どうした?」
「足の上に豆腐を落としたら、親指がつぶれた」
「ほおお」

ひっとでる  「飛びだす」「はみだす」
例文
「父ちゃん、父ちゃん、ひっと出ちょるよ」
「ええ? なんの出ちょっとな?」
「ほらあ、ふんどしん脇から父ちゃんの✕✕✕のひっと出ちょったい」
「ああ、こいや。こら立派すぎて、収まりきらんと」
和訳
「父ちゃん、父ちゃん、飛びだしてるよ」
「ええ? 何が出てるんだい?」
「ほらあ、ふんどしの脇から父ちゃんの✕✕✕が飛びだしてるのよ」
「ああ、これか。これは立派すぎて、収まりきれないんだよ」


ひゅうなし   「甲斐性なし」
ひゅうんなか  「甲斐性がない」

ひょくっと  「ひょっこり」「急に」
ひょこっと   同じく

ひらくち  「マムシ」

ひんよごまんよごしちょる  「くねくね曲がっている」


ふうけ   「愚かなこと」「愚か者」
ふうけもん  「愚か者」


ふうちがい  「変人」「変わり者」


ふち  植物の「よもぎ」
ふつ  同じく


ふなと  「漁民」「漁師」

ふのわるか  「運が悪い」

べー  「大便」「糞」

べーたんご  「肥えたご」「肥え桶」
 以前は人糞を畑の肥料にしていたので、それを便所から汲んで入れておく桶(おけ)があった。

へっちん  「便所」「雪隠(せっちん)」がなまったのでしょう。
へっちんたんご  「肥えたご」「肥え桶」
へっちんむし  「うじ虫」


ほがす  「穴を開ける」という意味

ほげる  「穴が開く」

ほっちらかす  「散らかす」「とっちらかす」

ぼっそり   「ごっそり」「全部」

ぼーじょ  「お魚」幼児言葉


ぼぼ   「女性器」「バギナ」「性行為」この言葉は古語らしいです。いまでは九州でしか通用しないようですが、江戸時代ではもっと広範囲に使われていたようです。因みに、岐阜県飛騨地方ではさるぼぼというおさるさんをかたどった人形があります。飛騨弁で「ぼぼ」は赤ちゃんのことらしいです。

ほめく  「ほてる」「熱を持つ」

ほんてが  「ホントだ」

ほんてや  「本当か」「ホントに」

ほんなこつ  「本当のこと」「本当だね」
例文
「社長が来月から給料ば倍にしてやるていいよらした」
「そら、ほんなこつか?」
和訳
「社長が来月から給料を倍にしてやると言っておられた」
「それは本当のことかい?」

ほんなこて  「本当だね」「そのとおりだね」
例文
「こがん、保険料は上げる年金はカットするていうたら、年寄りにゃはよ死ねて言われとるようなもんばい」
「ほんなこて」
和訳
「こんなに保険料は上げる年金はカットするといったら、年寄りには早く死ねと言われているようなものだよ」
「本当だね」


まちっと   「もう少し」
まちょこっと  同じく
例文
「お客さん、まちょこっと待っちょってくれらっさんですか」
和訳
「お客さん、もうちょっと待っててもらえませんか」

みたむなか  「みっともない」

みどか  「かわいらしい」

みどがる 「かわいがる」

むぞか  「かわいらしい」

よか   「良い」「グッド」「ナイス」「けっこう」

よかいが  「いいんじゃない」

よかいば  「いいのに」

よかとに  「いいのに」

よかろもん  「いいじゃないの」

よかんね   「いいのかい?」


よそわしか   「汚い」「汚らわしい」
例文
「あけみちゃん、チューすうか?」
「よそわし!」
「ねえ、よかろもん」
和訳
「あけみちゃん、チューしようか?」
「汚らわしい!」
「ねえ、いいじゃないの」


よま  「紐(ひも)」

よんにゅ  「たくさん」という意味
よんにゅか  「多い」
例文
「よんにゅ入れちょこかい」
「そら、あんまりよんにゅかよ。まちょこっと減らして」
和訳
「たくさん入れておこうか」
「それは、あんまり多すぎるよ。もうちょっと減らして」

わい  「おまえ」という意味  「おれ」は「おい」

わーが  「おまえ」

わったち  「おまえたち」

わんね  「おまえの家」






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★ この記事を書きながら聴いた音楽

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島原の方言(その4) そびく~のさん

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そびく
 「引きずる」という意味

たいかぶる  「ウンコをもらす」という意味  
       「シッコをもらす」はしかぶると言う。

たちえ  「棟上げ」「上棟式」のこと

ちゃびん  これは方言ではないと思いますが、消滅しかかっているので載せておきます。「どびん」の意味です。ハゲチャビンと言えばつるつる頭のつるっぱげのこと。

ちゃわんめご  「茶わんなどを洗って伏せておく篭(かご)」

ちょんぐわ  畑をたがやす鍬(くわ)のことです。

ちょうまき  「つむじ」のこと。頭のてっぺんの渦巻きです。

ちょこらかす  「からかう」「おちょくる」

ちんぐ  「知遇」「友人」朝鮮語が語源でしょうか。

ちんちろまい  「てんてこ舞い」「グルグル回ること」

ちんぼ   「男性器」「ペニス」のこと

つんぶるう  「振るい落とす」という意味

つんまげる  「曲げる」の意味

つんのて   「連れ立って」
例文
「つんのて行こかい」
和訳
「連れ立って行こうか」


てまぜ   「手をいじくりまわすこと」「手遊び」
てまんご  てまぜに同じ 「手まぜごと」から変化したんでしょうか?
例文
「ほら、てまぜしぇんで、しぇんしぇいの話ば聞かんね」
和訳
「ほら、手遊びしてないで、先生の話を聞きなさい」

てんこぶ  「蜘蛛(くも)」

てんげ  「手ぬぐい」

といも  「唐いも」「サツマイモ」のこと
例文
「といもめしゃ 粟んめし といもめしゃ 粟んめし」(島原の子守歌)
和訳
「サツマイモを混ぜためしは (米のめしではなくて)粟のめし」

どうはっせん  「落花生」「南京豆」「ピーナツ」のこと

どんく  「蛙(かえる)」のこと
例文
「ひゃあ、こけふとかどんくんおっど」
和訳
「ほら、ここに大きなカエルがいるよ」

とーんな  「おかしな」「変な」
例文
「じいちゃんな、とーんなこいば言わすとよ」
「なんて?」
「うちに『姉さん』『姉さん』て」
「『ばあさん』『ばあさん』て言わるよりはよかろもん」
和訳
「じいちゃん、変なことを言うのよ」
「何だって?」
「わたしに『姉さん』『姉さん』って」
「『ばあさん』『ばあさん』って言われるよりはいいだろう」


どんばら  「妊娠している人」

なおす  「片付ける」「収納する」

なし  「なぜ」
なして 「どうして」

なば  「茸(きのこ)」
例文
「うちんね来てみろ。畳になばん生えちょっとど」
和訳
「うちの家に来てみろ。畳にキノコが生えてるんだぞ」

なんか 
長い

なんかかる  「寄り掛かる」「もたれ掛かる」

なんもんよ  「なんだか」

にくじ  「いじわる」

にゃんにゃんする  「よくかみ砕く」という意味 特に離乳期の子供に母親が食べ物をかみ砕いて与えるときに使う
例文
「あけみちゃん、にゃんにゃんしてやろか?」
「よか、して要らん」
和訳
「あけみちゃん、代わりにかみ砕いてあげようか?」
「いいよ、して欲しくない」


ぬすくる  「塗り付ける」

ぬっか  「暖かい」「暑い」

ねずむ  「つねる」
例文
 わたしの子供のころの遊びで、こんなのがありました。
「ネズミば見せてやろか?」と、友達に言うと、
「うん。見せて」と友達。
「ほら、ネズミ~」と言って、相手の手をつねるのです。


ねまる  「腐る」という意味 
     ふつうは食べ物などが腐ることを「
ねまる」という。
     将棋などでもう次の手がない状態のことも「ねまる」という。
     食品ではなくても、売れない商品、動きのない商品のこと
     「ねまっとる」とか「
ねまっちょる」ということがある。
ねまっとる   
「腐っている」という意味
ねまっちょる  「腐っている」という意味
例文
「ばあちゃん、きのうんカレー冷蔵庫に入れちょかんやったけん、もうねまっちょいよ」
和訳
「ばあちゃん、きのうのカレー冷蔵庫に入れてなかったから、もう腐ってるよ」

のさん  「たまらない」
例文
「ことしん冬は寒うしてのさんばい。こら、温暖化じゃのうして寒冷化ん始まっちょっとばい」
和訳
「ことしの冬は寒くてたまらないよ。これは、温暖化じゃなくて寒冷化が
始まってるんだよ」




★ この記事を書きながら聴いた音楽

The Police - Every Breath You Take




Sandy Denny and Fairport Convention - Farewell Farewell




Knockin' On Heaven's Door - Bob Dylan




Bob Dylan - Knockin' On Heaven's Door (Unplugged)




Ravi Shankar & Anoushka Shankar Live: Raag Khamaj (1997)
ラビ・シャンカールとアヌーシュカ・シャンカールの父娘共演です。
アヌーシュカはいくつなんでしょうか。偉大な父との共演に緊張しているようですね。この初々しさがたまらんですね。











島原の方言(その3) おらん~そけ

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おらん
 「おる」の否定形 
「いない」
例文   
「あんた、彼女はおると?」
「おるおる」
和訳   
「あんた、彼女はいるの?」
「いるいる」


おらす 「おる」の軽い敬語表現 「おられる」
例文
「スナックみちこのママはたいてきれかね。彼氏とかおらすやろね」
「おらんげな」
「ほんてや?」
「ばってん、孫はおるげな」
和訳
「スナックみちこのママはとてもきれいだね。彼氏とかいるだろうね」
「いないんだって」
「ほんとに?」
「でも、孫はいるらしい」

おらっさん 「いない」の敬語表現だが、リスペクトの意味は含みながらもフレンドリーなくだけた感じの表現 「おらす」の否定形「おられない」
例文   
「母ちゃんな、おらしたとね?」
「いんにゃ、おらっさんやった」
和訳   
「母ちゃん、いた?」
「いいや、いなかった」


おる  「いる」という意味
おる  「俺(おれ)」の意味 いまは「おい」というほうが多い
例文
「モシモ~」
「はいはい」
「おるおる」
「だいね?」
「おるおる。おったない」
和訳
「モシモシ」
「はいはい」
「おれおれ」
「だれ?」
「おれおれ。おれですよ」

おろいか 「おんぼろだ」「程度が悪い」という意味
例文 
「バイクばもろたとて?」
「もろたちゃもろたとばってん、やっちゃおろいかった」
和訳 
「バイクもらったんだって?」
「もらったことはもらったんだけど、めちゃボロかった」

おろろん おろろん おろろんばい 
宮崎康平作詞「島原の子守歌」に出て来る言葉ですが、意味は分かりません。たぶん、「おろおろと泣く」というような意味だと推測されます。

北海道に「日本海オロロンライン」という観光ルートがあるようですが、このオロロンは天売島に棲息するウミガラスの別名が「オロロン鳥」であることから来ているようです。

おんぶくれる  「おぼれる」という意味
例文
「あいた、からすまがり。おんぶくるっ。わろちょらんで助けろ」
和訳
「しまった、足がつった。おぼれるよ。笑ってないで助けてくれ」

かあぶる  「いばる」「のぼせあがる」「調子こく」というような意味
きゃあぶる とも言います。
例文  
「あんやちゃ、こんごろかあぶっちょっとで」
「のぼすんなて、くらせろ」
和訳  
「あいつ、このごろ調子こいてるんだぜ」
「のぼせるなって、なぐってやれ」

かごむ 「かがむ」「しゃがむ」という意味 かがむとしゃがむが一緒になって出来た方言かもしれません。

最近あまり見ませんが、子供たちの遊びで「かごめ かごめ」というのがありますね。あれは、子供たちが ♪か~ごめ かごめ か~ごのな~かのと~り~は♪ とうたいながら、真ん中でしゃがんだ子供の周りを大勢の子供たちが手をつないでまるく輪になってぐるぐる回るんですよね。
この場合の「かごめ」は「しゃがめ」というよりは、「囲め」という意味なんでしょうね。
この「かごめ歌」の歌詞は実は古代ヘブライ語であるという説をとなえている人たちもいますので、ちょっと紹介しておきませう。

かごめ かごめ をヘブライ語で解釈する


例文 
「となりん爺ちゃんな、山にしば刈りに行って、ウンコすっとに草むらにかごじょらしたとげなもん」
「そらそがんじゃろ、便所はなかもんね」
「そしたら、イノシシん出て来たもんじゃっけん、逃げるに逃げられず」
「どがんさしたとね」
「出かかったもんば引っこむっわけにはいかんけん、じいーっとしまいまでかごじょらしたって」
「へえ、そしてイノシシゃどがんした」
「『おろ~、人間のちゃ、やっちゃくさかよ』て言うて、鼻ばつまんで逃げて行ったとげな」
「どうせ『
しばは刈らずにくさかった』ていうオチじゃろもん」
「やかましか」
和訳 
「隣の爺ちゃんは、山にしば刈りに行って、ウンコするのに草むらにしゃがんでたんだってさ」
「そりゃあ、そうだよね、便所はないしね」
「そしたら、イノシシが出て来たもんだから、逃げるに逃げられず」
「どうしたの?」
「出かかったものを引っ込めるわけにはいかないし、じいーっと最後までしゃがんでいたんだって」
「へえ、それでイノシシはどうしたの」
「『オーマイゴッド! 人間のはめっちゃくさいじゃん』って言って、鼻をつまんで逃げて行ったんだってさ」
「どうせ『
しばは刈らずにくさかった』っていうオチだろう」
「うるさい」

かずむ  「(においを)かぐ」という意味
例文
「おいの屁はよかにおいど。ほら、かずんでみれ」
「う~~ん、えくすたしいー」
和訳
「おれの屁はいいにおいだよ。ほら、かいでみろ」
「う~~ん、エクスタシー」


かたす  「加える」「仲間に入れる」
例文
「わったちゃ、なんしよっとな」
「ミミズにしょんべんばかけよっと」
「なしてそがんこいばすっと?」
「ばあちゃんの、ミミズにしょんべんかければ、ちんちんのふとなるて言わしたけん」
「そんなら、おいもかたして」
和訳
「おまえたち、何やってるの」
「ミミズにしょんべんかけてるんだよ」
「なんで、そんなことしてんだよ」
「ばあちゃんが、ミミズにしょんべんかけたら、ちんちんが大きくなるって言ったからだよ」
「それなら、おれも仲間に入れてくれ」

がっぱいする  「がっかりする」


かてる  「付け加える」「おまけする」
例文
「いつでんこうてくれらすけん、大根ばかてちょくけんね」
和訳
「いつも買ってくれるから、大根をおまけしとくね」

かぼんす  「頭でっかち」 もしかして「仮分数」から来た言葉か?

がまだす 「がんばる」「精を出す」

からう  「背負う」

からすまがり  「けいれん」「足がつること」

がんば  「河豚(ふぐ)」のこと あまりにもおいしいので、食べるなら、「がんば用意して食え(棺桶を用意して食え)」ということから「がんば」と呼ばれるようになったと言われている。

きばる  「がんばる」「精を出す」

きびる  「しばる」という意味

きゃあなえる  「疲れる」「しおれる」「へこむ」

きんなか  「黄色い」という意味

ぐうらしか 「かわいそうだ」という意味
例文
「ミヨちゃんな十八で死なしたげなとん、ぐうらしかねえ」
和訳
「ミヨちゃんは十八でなくなったそうだけど、かわいそうだねえ」

くちなわ  「へび」のこと

くらすみ  「暗闇」のこと
例文
「そがんくらすみにおらんで、もうちょっとこっちこんね」
和訳
「そんな暗いとこにいないで、もうちょっとこっちにおいで」

げな  「~げな」と語尾について「~だそうな」という意味

げなげなばなし  「あてにならない話」

こぎる  「値切る」という意味

ごっちん  「半煮えのご飯」のこと

こまか  「小さい」

こまんちょか 「ちっちゃい」
※ 強調するときは「こま~んちょか」とのばして言う。

こやらしか  「かわいらしい」

さるく 「歩く」「歩きまわる」という意味
さらく
例文  
「島原ん町にゃ、猿田彦ん神様ん、あっちでんこっちでん、とにかく多かっど。どがしこあっとか分からん」
「そらあ、猿田彦だけにさるいたしこあっとじゃ?」
和訳
「島原の町には、猿田彦の神様が、あっちでもこっちでも、とにかく多いんだよ。どれだけあるのか分からん」
「そりゃあ、猿田彦だけに歩いた分だけあるんじゃない?」(この訳は難しいですね。島原弁ならではのシャレですから)


じいやん  「じいちゃん」のこと 「ばあちゃん」は「ばあやん」

じぇん  「ぜに」「おかね」島原に限らず九州では「ぜ」の発音は「じぇ」になることが多い。
例文  
「じぇんのじぇんじぇんなか」
和訳  
「お金が全然ない」

しかぶる  「(オシッコを)もらす」こと ウンコの場合は「たいかぶる」と言う

しこ 「~だけ」「~の分」
こがしこ「これだけ」 
そがしこ「それだけ」 
あがしこ「あれだけ」 
どがしこ「どれだけ」 
例文
「え? 1万円でたったこがしこ?」
「消費税、
インフレターゲット、円安、安倍政権に文句言うて」
和訳
「え? 1万円でたったこれだけ?」
消費税、インフレターゲット、円安、安倍政権に文句言って」


しこる  「いばる」「テンパる」「固くなる」「勃起する」
例文 
 わたしの子供のころ、こういう遊びがありました。

 「花子ちゃん、イタリヤ・トルコ・滋賀盆地ば反対から言うてみて」
 「ええと、チンボガシコルトヤリタイ」

 いま、こういうことを女の子に言わせたら、間違いなくセクハラですよね。ちなみに島原弁で「せくはら」とはお腹が痛いという意味にもなります。蛇足になりますが、イタリヤはイタリア、滋賀盆地は近江盆地というのが本当なんですが、まあ、子供の遊びですから。

じご  「尻」のこと 「ひえじご」とは「憶病」「こわがり」の意味

じごんす  「尻の穴」「アス・ホール」
のこと
例文
「わら、あんまっ横着かこいば言いよったら、じごんすから手ば突っ込んで奥歯ばガタガタ言わすっど」
和訳
「おまえ、あんまり横着なことを言ってたら、尻の穴から手を突っ込んで奥歯ガタガタ言わせるぞ」


じだ  「地べた」「地面」のこと

例文
「じだにじごんすばじかにつけて座ったら、じになるて」
「へえ~」
和訳
「地べたに尻の穴をじかにつけて座ったら、痔(じ)になるって」
「へえ~」


じゅったんぼ  「水たまり」「ぬかるみ」の意味

すいちょっ 虫の名前(ウマオイムシ)ではありません。「好きだよ」という意味です。
すいちょる  「好きです」
すいとる   「好きです」
例文
「おら、あたんばすいちょっ」
和訳
「おれは、あんたを好きなんだ」

すいとっと  「好きなんだ」

すかん   「好きじゃない」「きらい」
例文
「花子ちゃん、おいはあんたばすいとっと」
「ごめんばってん、うちゃ、すかんと」
和訳
「花子ちゃん、おれはあんたを好きなんだ」
「悪いけど、わたしは、きらいなのよ」

すためる  「水やお茶などを残らず出してしまう」
例文
「お茶は、ようとんすためにゃんよ」
和訳
「お茶は、よく最後まで出しきらないといけないよ」

すだる  「後ずさりをする」という意味

ずんだれる  「だらしなくする」という意味
例文
「古川、ずんだれちょっど。ズボンはちゃんと上げにゃ」
和訳
「古川、だらしないぞ。ズボンはちゃんと上げなきゃ」

せからしか  「うるさい」「わずらわしい」 発音としては「しぇからしか」のほうが正しい

せく  「(腹が)痛む」
例文
「腹んせくと」
和訳
「腹が痛いんだ」

せく  「閉める」
例文
「戸ばよおとんせいてこんけん、すき間風んさんかやっか」
和訳
「戸をよく閉めてこないから、すき間風が寒いじゃないか」

せっくゎ(石花)  「牡蛎(かき)」のこと 石にくっついている天然のかきを言う。

せびらかす  「からかう」「おちょくる」

そいぎ   「それでは」「そしたら」の意味 別れぎわのあいさつにも使われる
そいぎら
そいぎった
例文  
「そいぎ、これで失礼します」
「ちょっと待て、じぇんばはろてから帰らんか」
和訳
「それでは、これで失礼します」
「ちょっと待て、金を払ってから帰らんか」

そうにゃ  「すごく」「大変に」という意味
例文
「ばあちゃんねで、ごっそになってきた」
「なんば食べたんね?」
「ちゃんぽん」
「うまかったんね?」
「うん。そうにゃうまかった」
和訳
「ばあちゃんの家で、ごちそうになってきた」
「何を食べたの?」
「ちゃんぽん」
「おいしかった?」
「うん。すごくおいしかったよ」

ぞおたん  「冗談(じょうだん)」 どおたんとも言う
ぞおたんのごつ  「冗談じゃない」

そがん  「そんな」「そのような」「そうだ」の意味
例文
「そがんこいば言うたらつまらん」
「そがんそがん」
和訳
「そんなことを言ったら駄目だ」
「そうだそうだ」

そがしこ 「それだけ」の意味
例文
「そがしこ言われたら、たいて腹も立つばない」
和訳
「それだけ言われたら、すごく腹も立ちますよ」


そけ  「そこに」「そこへ」の意味
例文
「お茶はそけ置いちょって」
「どけ?」
「こけ」
和訳
「お茶はそこに置いておいて」
「どこに?」
「ここに」


★ 参考文献

都道府県別 全国方言辞典


方言の日本地図ーことばの旅


滅びゆく日本の方言


方言学入門



★ この記事を書きながら聴いた音楽

Pentangle - Light Flight



Otis Redding  Sittin' On The Dock Of The Bay



藤圭子:島原の子守唄 









島原の方言(その2) ううばんげか~おめく

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ううばんげか 
「いいかげんな」「てきとーな」
例文   
「太郎兵衛どんな、いっちょん約束ば守らっさんと」
「あんわりゃいっでんじゃもん」
「ううばんげかと」
「そがん」

和訳   
太郎兵衛さんは、ちっとも約束を守らないんだよ」
「あの人はいつでもだもん」
「いいかげんなんだ」
「そうだよ」


うしつる
  「捨てる」という意味ですが、たぶん「打ち捨てる」から転訛したのでしょうね。

うしてる
例文   
「靴ばひろた」
「へえ」
「ありゃ、いんのクソんひっついちょっ」
「よっそわしか、うしてろ」

和訳   
「靴ひろった」
「へえ」
「あれ、犬のクソがくっついてるぞ」
「きたないよ、捨てろよ」

うち  「あたし」という意味で女性が用いる言葉
例文
「うちは、あんたば好いとっとよ」
和訳
「あたしは、あんたを好きなのよ」


うてあう 「相手にする」という意味
例文   
「となりん婆さんのしょっちゅううちに来て、じぇんば貸せ、じぇんば貸せって言わすとじゃもん」
「そがんとは、うてあうな」
「ばってんがさ、むかしゃよかおなごやったとばってんなあ」

和訳   
「隣の婆さんがしょっちゅううちに来て、金を貸せ、金を貸せって言うんだもん」
「そんなのは相手にするなよ」
「でもなあ、昔はいい女だったんだけどなあ」


うっちゃえる 「落ちる」という意味ですが、どっちかというと「落っこちる」感じ
うっちゃゆっ おっちゃくっ おっちゃける とも言います
例文  
「じいちゃんな、立ちきらっさんと」
「なしてな?」
「屋根からうっちゃえらしたとげな」

和訳  
「おじいちゃん、立てないんだって」
「どうしてだい?」
「屋根から落っこちたんだってさ」


※ この例文中の「立ちきらっさん」は、現代日本語に翻訳するのはちょっと難しいですね 「立ちきらっさん」は「立ちきらす」の否定形です。語尾の「~らす」は敬語表現なのですが、目上の人や年長者に対しては日常的に頻繁に使いますので、共通語で「立つことがおできにならない」と言うと、あまりにもオーバー、ばか丁寧になってしまいます。もっとくだけた、フレンドリーな感じでの敬語表現です。

うっちゃかす  「落とす」という意味 「おっちゃかす」とも言います
おっちゃかす
例文  
「あいたあ~、500円玉ば便所でおっちゃかしたごたっ」

和訳  
「オーマイゴッド! 500円玉をトイレで落っことしたみたい」

えっと  「あまり~ではない」というときの「あまり」という意味
例文
「あそこんちゃんぽんは、うまかった?」
「えっとうもなかった」
和訳
「あそこのちゃんぽん、うまかった?」
「あまりうまくなかったよ」

えん  語尾に「~えん」と付いて「~出来ない」という意味
例文
「こがんこちゃしわえんばい」
和訳
「こんなことは出来ないよ」

おい  「おれ」の意味 主に男が使うことば
おる  おい」はいまでもよく使いますが、「おる」と言う人は少なくなりました

おいげ 「おれの家」「おれんち
おるげ 同じく「おれんち」という意味ですが、お年寄りしか使いません
例文  
「たまにゃ、おいげにも遊びに来いや」
「とおかんば。わんねまで何万光年もあっとば」
「なんまんこうねん?」
「そう」
「そがんあいか!」
和訳  
「たまにはうちにも遊びに来いよ」
「遠いんだから。おまえんちまでは何万光年もあるんだから」
「なんまんこうねん?」
「そう」
「そんなにあるかい!」

おいどん 「おれたち」「わたしたち」
おどん  「わたし」
おどみゃ 「わたしは」
例文
「おどみゃ 島原の おどみゃ 島原の なしの木育ちよ」(島原の子守歌)
和訳
「わたしゃ 島原の わたしゃ 島原の なしの木育ちよ」


おえる 「生える」「成長する」「年を取る」「ふける」などのニュアンスをすべて含んだ言葉 

 ちなみに、「おえる(生へる)」としてネット辞典のgoo国語辞典にも載っていますから古語なんでしょうね。
goo国語辞典では、意味は
 はえる。  陰茎が勃起する」とありますが、島原弁としてはの意味で使うことはないです。

 すごいですね「インケイがボッキ」ですよ! 
 陰茎が勃起することを、「生える」と言っていた時代や地域があるんですね。たしかに、小さいきのこがだんだんと大きくなって、成長していく感じはありますからね。

例文  
「オクラばプランターで育ててみたとばってん、気付いたらもうおえちょって固うして食われんごたる」

和訳  
「オクラをプランターで育ててみたんだけど、気付いたらもう育ちすぎていて固くて食べられないみたい」


おおどか  「生意気だ」

おおどぼうず  「腕白少年」「生意気なガキ」
例文   
「うちん孫はたいがいおおどぼうずばない」
「そらあ、爺さんに似たったない」

和訳   
「うちの孫はすっげえ生意気坊主なんだよ」
「そりゃあ、爺さんに似たんだよ」


おかっつぁま  「奥様」の意味です 目上の女性に対する敬語です

おじる  「ビビる」「こわがる」
例文   
「うちん孫娘もたいがいおおどか。いっちょんおじらんとじゃけん」
「いい、そがんじゃろもん。おなごんほうがおおどかち。うちんかかもそがんたない」

和訳   
「うちの孫娘もすんごい生意気なんだよ。ひとつも怖がらないんだから」
「うん。そうだろうよ。おんなのほうが生意気なんだ。うちの奥さんもそうなんだ」

おじやん  「おじさん」

おっかん  「お母さん」

おっとん  「お父さん」

おっとる  「盗む」という意味
例文   
「こないだ貸した1万円ば返して」
「ありゃあ、財布に入れちょった100万円のなか! おっとられたとばい」
「はいはい」

和訳   
「こないだ貸した1万円返して」
「ありゃ、財布に入れといた100万円がない! 盗まれちゃったよ」
「はいはい」

おっとろし  「ああ、こわい」「おそろしい」



おなご   「女の人」


おばやん  「おばさん」


おめく   「叫ぶ」「大声を出す」
例文  
「あら、うちんチームは負けちょるばい」
「応援のたらんとど。みんなでふとか声でおめこで」

和訳  
「あら、うちのチームは負けてるよ」
「応援が足りないんだよ。みんなで大きな声で叫ぼうよ」





★ この記事を書くのに参考にした本

山本靖民編著『島原半島 方言集』


★ この記事を書きながら聴いた音楽

マザーシップ~レッド・ツェッペリン・ベスト


Led Zeppelin - Stairway to Heaven

Ann & Nancy Wilson (Heart) - Stairway To Heaven

The Rain Song - Jimmy Page & Robert Plant
















島原の方言(その1) あい~いんにゃ

<はじめに>

 地方で生まれ育った人にとって、その土地の言葉はまさしく母語であり、慣れ親しんできたものでしょうが、その一方、「なまってる」とか、「田舎っぽくて変だ」とか、「恥ずかしい」という気持ちもつきまとうものです。
 かつては、小学校に入り、教科書をもとに勉強するようになると、教科書に書かれている言葉は「標準語」であり、先生や大人たちから「標準語」が正しい日本語であり、方言は使わないようにと指導されてきました。
 
日本全国の小学生は、南は沖縄から北は東北、北海道にいたるまで、標準語はきれいな言葉で、自分たちの母語である地方語(方言)はきたない言葉だという意識を植え付けられてきたのです。

 それが、最近は少しずつ変わってきているように思えます。
 かつて、ラジオ、テレビで耳にする言葉や、東京の言葉だけが正しい日本語であるとして、「標準語」や「東京弁(これも地方語の一種ですが)」にあこがれた地方人たちは、いまはそのテレビによって「新しい表現方法」「面白い日本語」として、自分の土地以外のさまざまな方言に触れることができるようになったのです。

 語尾に「じゃん」をつける「~じゃん」という言葉はすでに若者たちにとっては共通語となっています。また、北海道の方言であった「なまら(すごく、非常に)」という言葉も広く若者たちに用いられるようになりました。

 東京で生まれ育った若者たちが、こういった地方の言葉を断片的にであっても率先して取り入れる文化が育ちつつあります。
 いつの時代でも、若者たちは新しい表現方法や、自分たちの気持ちにぴったりの言葉を見つけたり、もしそれがなければ、新しいものを作り出すことにかけては天才なのです。

 標準語、あるいは共通語と呼ばれる言葉も、決して文部科学省やNHKが定めたものではなく、日本で暮らす多くの人によって日々用いられながら、より豊かに、より多様に進化し続けているのだと、わたしは思っています。

 方言においても同じことが起こっています。
 かつては、なまりが恥ずかしいとか、きたない言葉ではないかと思っていた、自分たちの生まれ故郷の言葉が、実は古い日本語を残している大事な言葉であったり、標準語ではどうしても表しきれない感情を言い表せる唯一の言葉であると、次第に認識できるようになり、自分たちの言葉に誇りが持てるようになってきました。

 ところが、ラジオ、テレビ、インターネットと、情報伝達の手段が発達し、日本全国に飛行機や新幹線、高速道路などの交通網が張り巡らされ、大量の人が毎日移動し、進学や就職のために多くの若者たちが、自分たちの故郷を離れて都市に移り住み、そこの言葉を覚えるようになると、その地方独自の言葉で消滅していくものも増えてきました。

 もう、ずいぶん昔のことですが、わたしが高校に入って、最初に古文の授業を受けたときの話です。
 古文の先生が、「あはれ」という言葉について、この言葉は「ああ!」という言葉と、「はれ!」という二つの言葉が一つになって出来た言葉であると説明されたのです。「ああ!」も「はれ!」も、心が大きく揺り動かされたときの感嘆、感動の言葉ですが、その二つがあわさり、さらに強調された感動としての言葉であるとの説明だったのです。
 
 いま、わたしの手元にある古語辞典(岩波古語辞典 大野晋編 1974年版)によると「ああ」は「驚き、感動、嘆きのときに発する声」と載っています。また、「はれ」は「やれ、まあ」という感動詞として載っています。
 そして、「あはれ」には「感動詞アとハレの複合。はじめは、事柄を傍から見て讃嘆・喜びの気持ちを表す際に発する声。それが相手や事態に対する自分の愛情・愛惜の気持ちを表すようになり、平安時代以後は、多く悲しみやしみじみした情感あるいは仏の慈悲を表す」という説明がなされております。

 わたしが「あはれ」という言葉の成り立ちを教わった、その古文の授業で、そのもとになった「はれ」が、いまも本来の感動を表す言葉として、実はこの島原(北部の地域)でまだ使われていると知ったとき、わたしは大変驚き、感動を覚えました。
 
 そのことは、それまで抱いてきた方言に対しての「恥ずかしい」とか、「下品だ」というコンプレックスを100%ではないにしろ、かなりの程度吹き飛ばしてくれるほどの衝撃でもありました。

 これは「あはれ」というたった一つの言葉にまつわる例ですが、このように古い言葉が方言の中に生き残って使われているという例は、島原だけではなく日本中の田舎、すなわち東京という政治の中心地から見れば周辺部、辺境といってもいい地域にはまだまだたくさん残っています。

 このことから、わたしは二つのことを想像します。
 一つは、かつて広範に用いられていた「共通語」的な言葉が、多くの人が住み目まぐるしく変化していく都会においては、生活様式の変化とともに捨て去られ、消えていかざるを得なかったけれども、辺境である地方においては生活様式の変化自体もゆるやかであり、またそこに住む人々の人間関係も昔とそれほど違ってはいないので、まだまだ昔の言葉が当時の使い方のまま生き残っているのではないかということ。

 そして、もう一つは、言葉は必ずしも中央(東京)から地方へと伝播(でんぱ)していくとは限らず、かつて政治・文化の中心は東京や江戸ではなく、京都にあったことや、またさらにさかのぼる大昔には、古事記や日本書紀に表されているように、日本という国の成り立ちは九州から始まり近畿に移り、ヤマト朝廷が成立したとされているように、もしかしたらこの九州に残る言葉にはそのころのなごりがあるのかもしれないし、それらの言葉こそが日本語の成立の根幹にあるかもしれないとも思うのです。 
 現に沖縄の言葉は、標準語しか理解できない人からするとほとんど外国語のように思われるのですが、古く格調高い日本語がたくさん残っています。
 一方、北のほうでは、アイヌの人々がこの日本列島に古代から先住民として住み続けています。アイヌ語の中には、さらに古い言葉や思想が残っていると思われます。哲学者で古代研究でも有名な梅原猛氏は、日本古代の研究にアイヌ学は最重要と思われるとも書いておられます。
 
 また別の側面から見ると、わたしは格調高い古語だけでなく、世の人々から下品、低俗、わいせつと言われるような言葉も重要ではなかろうかと思っております。
 ウンコ、シッコ、チンチンというような言葉は、子供たちは大好きです。なぜ、好きなのかというと、その言葉を発すると大人達からしかられて禁止されるから、好奇心と冒険心旺盛な子供にとってはそれは魔法の言葉のようで、言ってみたくてたまらないということもありますが、まず人間にとって食べるのと同じくらいに重要なのは排泄(はいせつ)することであり、特に男子の場合は、自分の股間についている突起物はどうも排泄(はいせつ)だけに用いられるものではないようだとうすうす感づいており、女子のそれはどうも違う形をしているようだけれど、それは何という名で呼べばいいのだろうか、そして女子はどうやってオシッコをするのだろうか、また、チンチンや女子のそれはオシッコ以外にどんな利用方法があるのだろうかと、考えれば考えるほど気になって仕方がないのです。

 古代と言わず、少し前まで、この日本では性に関してはもっとおおらかであったと言われております。
 現に、各地に男根や女陰を御神体として祀る神社がたくさんあります。これは日本だけでなく世界のどこでも見られることで、性器は子供を産み出す神秘的な力を持つものとして、崇拝の対象だったのです。
 近代化され、学校教育で「ウンコ」「シッコ」「チンチン」などという言葉は汚い言葉として洗脳され、まして女性器の名前など口にしようものならば、中世の魔女狩りのごとく糾弾(きゅうだん)され、蔑視(べっし)され、教師だけではなくクラスの良い子たちからのけ者にされるのです。事実このわたしの小学生時代がそうでした。

 そんなわけで、わたしはこの良識人の間では口にすることを禁じられた言葉にも、古代の人々の生き方や世界観を知る手掛かりや、もっと言えば人類普遍の哲学や真理に至る重要な鍵が隠されているのではないこと想像する次第です。

 てなわけで、そういう「下品な言葉」はきらいだという人は、その部分は目をつぶって読み飛ばしてください。

 最初にお断りしておきますが、ここに集めた「島原の方言」はあくまでもわたしの子供時代から現在にいたるまで、周りの人たちが使っているのを耳にし、また、わたしを含めていまでも使用している言葉です。
 独断と偏見で集めたものと言ってもいいかもしれません。
 学術論文ではありませんので、もし、「あれが入ってない」「これは知らん」といった言葉もあるでしょうが、ご指摘いただいたものから順次、加筆訂正していこうと思っております。







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あい
  「あれ」のことです 「あれ」が欲しいとか「あれ」をしたいとかの「あれ」あとに続く言葉によって「あっ」という場合もあります 音便形というやつです。「あつ」ではなくて小さい「っ」の「あっ」です
例文  
「あいば取ってきて」
「あいてどいね?」
「あいはあったい」
和訳  
「あれを取ってきて」
「あれってどれよ?」
「あれはあれだよ」

※「これ」は「こい」 「それ」は「そい」 「どれ」は「どい」
 「あいでんこいでん」は「愛でも恋でも」の意味にも「あれでもこれでも」の意味にもなります

あいどん 「あいつら」「あいつたち」
例文   
「あいどんなたいがいきゃあぶっちょっ」
「くらせろ」

和訳   
「あいつら、いいかげん調子づいてるぜ」
「なぐっちゃえ」


あいどみゃ 「あいつらは」


あえる  「落ちる」ということです
例文  
「道に100円あえちょった」
「また洋服ば汚して! あろてんあろてんあえんとやっけん」
和訳  
「道に100円落ちてた」
「また洋服を汚して! 洗っても洗っても落ちないんだから」


あおのけ 「あおむけ」のことです
例文 
「あおのけにならんね、はよう」
「なっちょっとん」
「どうまた、真っ黒日焼けして前も後ろも分からんとん」

和訳 
「あおむけになってよ、はやく」
「なってるじゃん」
「オーマイゴッド! 真っ黒に日焼けしてるから前も後ろも分かんないよ」

あがしこ  「あれだけ」
例文
「あがしこ言うとったいに、また、きゃあまちごうてから」
和訳
「あれだけ言っといたのに、また、間違えてしまって」


あがん 「あんな」「あのような」という意味
例文 
「母ちゃん、こら、どがんすればよかと?」
「そら、あがんして、こがんして、そがんすればよかったい」
和訳 
「母ちゃん、これはどうすればいいの?」
「それは、ああして、こうして、そうすればいいのよ」


あじくらう 「あじをしめる」という意味です 「あじをしめる」って鰺を締めるんじゃないですよ 「味を占める」です 「一度うまくいったことからその妙味を知り、暗に次にも同様のことを期待する」という意味(goo国語辞書


あせがる 「急ぐ」という意味です
例文  
「あせがってご飯ば食べにゃ学校に遅るっよ」

和訳  
「急いでご飯を食べなきゃ学校に遅れるよ」


あせくる 「かきまわす」という意味
例文  
「そがんあせくったらつまらん」

和訳  
「そんなにかきまわしたら駄目」


あた  「いたずら」のことです
あたする 「いたずらをする」

例文  
「あたせんとよ」

和訳  
「いたずらしないのよ」


あたん  「あなた」または「あんた」という意味です
例文  
「あたんなどけ行っちょらした?」

和訳  
「あなたはどこに行ってらしたんですか?」

あたんね 「あなた(あんた)の家」という意味
例文   
「今夜はあたんねに泊めちくれんかない」
「豚小屋でよかならよかよ」
和訳   
「今夜はあんたの家に泊めてくれないかな」
「豚小屋でよかったらいいよ」

あっか  「赤い」「明るい」
例文
「うさぎの目はなしてあっかと?」
和訳
「うさぎの目はなぜ赤いの?」


あっちさん  「あっちのほうへ」
あっちゃん   同じく「あっちのほうへ」
例文
「あっちゃん、あっちゃん行くぎつまらんとよ」
和訳
「あっちゃん、あっちのほうへ行ったら駄目だよ」


あっどん 「あれら」「あいつら」
例文 
「あっどんな、どがんもこがんもならん」
「くらせろ」

和訳 
「あいつらは、どうにもこうにもならない」
「なぐっちまえ」

あにやん  「お兄さん」

あねしゃん 「お姉さん」
例文  
「あねしゃんな どけ行ったろかい あねしゃんな どけ行ったろかい」
和訳  
「お姉さんは どこに行ったろうか お姉さんは どこに行ったろうか」

※ これは「島原の子守歌」の一節ですが、この「あねしゃん」は「からゆきさん」として女衒(ぜげん)にだまされて売られて行ったのです。
「からゆき」さんについては別項で詳しく紹介したいと思います。

島原の子守歌/倍賞千恵子


倍賞千恵子の島原の子守歌は、とてもきれいな声でこの歌の哀しさは伝わってきますが、商業ベースなのか肝心の「からゆきさん」を思わせる歌詞は出て来ません。

次の森繁久弥のうたう「島原の子守歌」は、森繁がこの「島原の子守歌」の作詞者である宮崎康平と早稲田大学時代からの友人であるためか、原曲原詩にかなり忠実にうたっています。

森繁久弥/島原の子守歌



あまる  子どもがふざけてさわいだり暴れたりすること
例文  
「あんたたちゃあまったらつまらんとよ」

和訳  
「あんたたちはふざけたら駄目なんだよ」


あもじょ 「おばけ」「幽霊」の意味ですが、これは島原弁と言えるのか、それとも極めてローカルな言葉なのか確認できていません。子ども時代にわが家の周辺では使っていました(島原市高島町)
あもよ  「あもよ~」とも言っていたので、もしかしたら「あの世」というのが本来の意味だったかもしれません。

例文  
「あもじょ~」
「ああ、おとろし」

和訳  
「おばけだぞ~」
「ああ、おそろしい」


あんやっ 「あいつ」という意味
例文  
「あんやちゃ、のぼせちょっと」
「くらせろ」

和訳  
「あいつは調子にのってるよ」
「なぐれ」



いい  「うん」という意味 「唯々諾々(いいだくだく)」のいいでしょうか。
例文
  
「あいば持ってきて」
「いい」
「あいで分かっとな?」
「いい」

和訳  
「あれを持ってきて」
「うん」
「あれで分かるの?」
「うん」


いが  「こども」のこと

いがもり 「子守」のこと

いかにゃん  「行かないと」「行かなければ」という意味
 ※ 語尾に「にゃん」が付くと「~ねばならない」という意味になる

いげ  「刺(とげ)」のこと

いっち  「最も」「一番」ということです
例文   
「あたんがいっちよか。いっち好いちょっとよ」

和訳   
「あなたが一番いい。一番好きなのよ」


いっちょ 「一つ」のことです

いっちょん  「一つも」

例文  
「映画は面白かったね?」
「いっちょん面白なかった」

和訳  
「映画は面白かった?」
「一つも面白くなかった」


いっちょく 「置いていく」「置き去りにする」
例文  
「はよせにゃいっちょかるっとよ」

和訳  
「早くしないと置いていかれるよ」

いを  「魚」

いん  「犬」


いんにゃ 「いいえ」「いいや」という意味
例文  
「あたんな北海道に行ってこらしたげなとん」
「いんにゃ、おら沖縄に行ってきたと」

和訳  
「あんた北海道に行ってきたんだって?」
「いいや、おれは沖縄に行ってきたんだよ」




★ この記事を書きながら聴いた音楽


If You Can Believe Your Eyes & Ears




MJQ  Jazzology




Mamas & the Papas - California Dreamin'





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